誰かの中の1日目
西村 烏合
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誰かの中の1日目
西村 烏合
chapter 7
なぜ自分がここから物事を見ているのかわからない時がある。
解放されるのは、自分がどこに居るか忘れている時。
でもここはそんなに広くない。走ろうとして檻に頭をぶつけて、自分が閉じこめられていることを思い出す。
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誰かの中の1日目
西村 烏合
chapter 6
キャラバン・プラネット115自慢の軌道上ナイトクラブ、その調理場につながる食材搬入口に、高級ステリオ産ワインのコンテナが運び込まれてきた。バーカウンター担当のアンドロイドはコンテナを調理場の食材保管スペースまで運び入れ、人目がないのを確認してコンテナを開封した。
「酒はまだか?客にダーツの的にされたくなかったら今すぐ持ってこい」
「今行きます」
突然響いた無線通信機の音声に驚きながらも、アンドロイドは丁寧に返答して、コンテナの中からまず余分な積荷を引っ張り出した。
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誰かの中の1日目
西村 烏合
chapter 5
沈黙が音をかすかに耳に届けている。遠く宣伝用の飛行艇から垂れ流される常套句。建物の外から、割れた窓の隙間から、不明瞭に響いてきて、荒れ果てた劇場の壁と床に吸い込まれていく。
舞台の上に布を敷いただけの場所で気を失っていたセスが、目を覚まして最初に見たのは、はがれてほとんど原形がわからなくなっている星図の絵だった。天井一面に描かれていたようだが、いまは絵があったことがかろうじてわかるだけだ。天井の色はほとんど、はがれかかった資材の黄土色や腐食した茶色しかない。
その視界の中に、アレックスが現れた。
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誰かの中の1日目
西村 烏合
chapter 4
ムンタザの青々とした芝生が風を受けて揺れている。リラックスした人々が気持ちよく伸びをする姿が見える。そんな中で思案顔をしているのは自分だけかもしれない。アレックスはそう思った。しかし、ここでは誰も他人のことなど気にしていない。一面の緑の芝生と適温に調整された心地よい温度に、外の気候など忘れて全員無防備になっている。風が吹き抜けても、この空間だけは暖かい。寝転んだまま起き上がれないのではないかと思われる腹が小さな丘のように点在していたり、今にも折れそうなほど痩せた青白い体が虚しい期待とともに日光にさらされていたり、全体の景色は、美しい存在が憩う楽園とはいかない。しかし休むことを知らないキャラバン・プラネットでは、ムンタザは貴重な休息場所と言えた。
セスは昨日の夜から帰って来ていない。一人の時間が欲しいと言って出て行ってから。
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