誰かの中の1日目
西村 烏合
chapter 4
ムンタザの青々とした芝生が風を受けて揺れている。リラックスした人々が気持ちよく伸びをする姿が見える。そんな中で思案顔をしているのは自分だけかもしれない。アレックスはそう思った。しかし、ここでは誰も他人のことなど気にしていない。一面の緑の芝生と適温に調整された心地よい温度に、外の気候など忘れて全員無防備になっている。風が吹き抜けても、この空間だけは暖かい。寝転んだまま起き上がれないのではないかと思われる腹が小さな丘のように点在していたり、今にも折れそうなほど痩せた青白い体が虚しい期待とともに日光にさらされていたり、全体の景色は、美しい存在が憩う楽園とはいかない。しかし休むことを知らないキャラバン・プラネットでは、ムンタザは貴重な休息場所と言えた。
セスは昨日の夜から帰って来ていない。一人の時間が欲しいと言って出て行ってから。
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