誰かの中の1日目
西村 烏合
chapter 5
沈黙が音をかすかに耳に届けている。遠く宣伝用の飛行艇から垂れ流される常套句。建物の外から、割れた窓の隙間から、不明瞭に響いてきて、荒れ果てた劇場の壁と床に吸い込まれていく。
舞台の上に布を敷いただけの場所で気を失っていたセスが、目を覚まして最初に見たのは、はがれてほとんど原形がわからなくなっている星図の絵だった。天井一面に描かれていたようだが、いまは絵があったことがかろうじてわかるだけだ。天井の色はほとんど、はがれかかった資材の黄土色や腐食した茶色しかない。
その視界の中に、アレックスが現れた。
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